イスラムアート紀行

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インド・イスラム、模様調査隊が行く(パルメット編)

前回は、ティムール朝とそのインドでの継承王朝の側面もあるムガル朝の模様について書いてみました。今回は、デリー・サルタナット朝(13-16世紀にかけてデリーを本拠として北インド一帯を支配したトルコ系及びアフガン系ムスリムの諸王朝)とムガル朝の模様について、少し見てみたいと思います。

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(ファテプル・シークリー/アグラ/インド/16世紀後半/ターコイズブルーのタイルの屋根。その下にあるパルメット風模様)

◆ パルメット見て歩記 ◆
といっても、専門ではない私に、むつかしいことはわかりません。「あ、同じ模様がある〜!」と喜んでいるレベルなんです。単純!その模様とは、これ、パルメット模様。インド・イスラーム文化の基礎を作ったといわれるトゥグルク朝 (1320年~1413年/トルコ系/タイル装飾が素晴らしいのは、ムルタンの「シャー・ルクネ・アーラム」など)や、アフガン系のローディ朝 (1451年~1526年)/ウッチュの「ビー・ビー・シャビンディー」などがある)で目立つこの模様。

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(シャー・ルクネ・アーラム(廟)/ムルタン/パキスタン/1320-24/ファサード上部。テラコッタとモザイクタイル。パルメット風の多様なモチーフ。これを見ると好まれた模様なのだと感じます)

これらのタイルがあるのは、インドというよりも現在のパキスタンではありますが、、。少なくともムガル朝初期まで、このあたりの地域でとても好まれたのかなと感じます。

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(バハルディンハリム(廟)/ウッチュ/パキスタン/15世紀末/埋葬ホールの内部空間。煉瓦造。蒼の施釉タイル装飾が印象的。パルメット風も)

だって、こんなにあるんですよ!それも目立つポイントに。中東や中央アジアにもパルメット模様はありますが、この宇宙人みたいな、キノコみたいなカタチ、ちょっと珍しいと思うのですが、どうなんでしょう。ご専門の方に教えて欲しいな!

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(ビー・ビー・シャビンディー(廟)/ウッチュ/パキスタン/1493/目立つキノコ形はパルメット?アッラーの文字や花模様を組み合わせて)

インドのタイルについて、タイル専門書&写真集『THE ART OF ISLAMIC TILE』には、こう書かれています。「インドの建築物にはほとんどタイルが使われていない。特にイランや中央アジアと比較して、その少なさが際だつ」「この分野に関しては、これまでほとんど専門的な研究がされてこなかった。また、インドのタイルについての体系的な目録も上梓されていない」。知りたいけど、ふれることがないのも、仕方のないことですね。

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(シカンドラ〜アクバル廟/アグラ近郊/インド/1613/くっきりとあります)

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(シカンドラ〜アクバル廟/アグラ近郊/インド/1613/四角形でもかたくなにパルメットにしている印象)

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(シカンドラ〜アクバル廟/アグラ近郊/インド/1613/タイルですよ〜!この黄色がインドだなあ)

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(タージ・マハル(廟)/アグラ/インド/1654/凝った模様です。あまり惹かれない)

インドでタイルが使われなかった理由として、同書には、「石造を好む」点に加え、「ヒンドゥーの伝統ではテラコッタは不浄なものと考えられてきた。陶器類は一度しか使われず、金属が食器として利用されている」とあります。この点は、どうなんでしょうか。なんとなくピンとこない私です。

◆ イカ風イアリング ◆
パルメットの他に、もうひとつ気になっていた模様がありました。 心の中で「イカ」と呼んでいた左下の模様。これって何!?

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(たぶんウッチュ)

近いものを見つけました。地味ですけど。「イアリング」なんだそうです。

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(ファテプル・シークリー/アグラ/インド/16世紀後半)

意識して模様を見てみると、デリーサルタナット〜ムガルの模様のパターンが少し見えてきます。パルメット、ミヒラーブ、壷、花模様、六角星、八角星、波形、蓮、糸杉。名前を知らないけど多数あるモチーフ、いろいろ。模様の中にまた模様、模様同志の組み合わせなど、無限のパターンが楽しい、インド・イスラム。まだまだ知りたいことたくさん!
by orientlibrary | 2009-06-04 00:51 | タイルのデザインと技法