イスラムアート紀行

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セレクトショップで”ギーヴェ”は売れますか?!

西アジアの伝統工芸や遊牧民の暮らしを強烈に愛するSさん、今年もイランへ。“あのへん好き”が集まった機会に、バザール(観光客は行かないような地元のバザール。イスファハンでした?テヘラン?)で買ったという様々な綺麗なもの、おもしろいものを見せてくれました。

毛織物、布、細密画から食器、キラキラのライターまで。情緒的で浪漫な感じで、イランだなあと皆で楽しみました。そして最後に、こんなものも、という感じでSさんが出したきたのが、靴(らしきもの)。「何、これ〜?!」、、好奇心が刺激されますね〜。

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(謎めく靴底を持つイラン靴(右)、その正体は!?/(左)のはゴム底のレディース)

靴の上部(甲部)はコットン製。爽やかでステキじゃないですか〜☆!が、裏を見るとどっしりした布製?さらに謎なのは、つま先とかかとのワラ状のもの、、。Sさんによれば「ラクダの骨と聞いた」そうです。マジックでデカデカと書かれている「3」はサイズ?

「裏の布地、雨の日に色が滲みだしてくるかも〜」などと失礼なことも言いつつ、「“キャメルボーンシューズ”ってことでBEAMS とかで売り出したらいいのに」と盛り上がりました。

写真も撮って帰ったので、ブログの話題で「イランのメンズ靴特集」がいいかも、と思って写真集をチェック。ペルセポリスから現代までページに付箋をしていたところ、、なんと発見したのです。この靴を作っている写真を!

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(「IRAN THE NEW MILLENIUM SERIES」より引用。「伝統的なやり方でコットンの靴を作る」とのキャプション。どうも「キャメルボーン」とは靴底が異なる印象、、品がいいというか、、)

イラン全土を紹介したガイドブック的な写真集「IRAN THE NEW MILLENIUM SERIES」のなかの「KURDISTAN」のなかに風景や建築と並んで大きく紹介されています。文中の説明は短く、「イランの靴の種類のひとつである“GIVEH“。通常は田舎で使用される」とのこと。伝統工芸が今も生きているという説明の流れなので、クルドだけが履く民族的な靴というわけではなさそうです。

もっと知りたいなあ、、そう、こんなとき頼りになるのが、『ペルシアの伝統工芸 風土・歴史・職人』(平凡社)。載ってるかなあ、、、あ、さすが!ありました。「ギーヴェ(布靴)作り」。ホントに素晴らしい本です。

が、いきなり、「ギーヴェ作りという地味な技術の発達過程については、ほとんど知られていない」という文章。でも、ただ者ではないこの本、ここからが詳しい。数ページを費やしています。もともとはファールス州のグンディージャーンという地域が生産地として有名でしたが、現在ではイスファハーンとシーラーズの間にあるアーバーデというところが産地なのだそうです。
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(『ペルシアの伝統工芸 風土・歴史・職人』(平凡社)より引用。ギーヴェの靴底)

「イランのギーヴェはイランの気候によく適した、履き心地のよいものであるが、西洋タイプの靴とはまったく異なっている。それは驚くほど強靱で耐久性のある布製の靴底と、綿糸で編んだ甲部とからできている」。

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(『ペルシアの伝統工芸 風土・歴史・職人』(平凡社)より引用。甲部と靴型)

ギーヴェの製作には3人の職人が関わるそうです。まず女性が自宅で丈夫な綿糸で甲部を編みます。この仕事だけで数日必要。次に靴底作り職人がゴムを塗ったぼろ切れなどを平らに打ちのばし、さらにつま先とかかとには帯状の牛の皮を補強剤として置き革ひもで固定する。3人目の職人は、靴底のまわりに革ひもを縫いつけ、靴型に甲部を乗せて縫い合わせる、、、

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(『ペルシアの伝統工芸 風土・歴史・職人』(平凡社)より引用。靴底を甲部に縫い合わせるギーヴェ職人)

と複雑な記述を要約して書いてみても、じつはさっぱり理解できていません。とにかく手間をかけて作られるようです (^_^;)。問題はキャメルボーン。どこを読んでも、記述が出てこないんです。

「良質なギーヴェには、綿糸で内張りされたり、かかとが革張りされたり、爪皮で補強されたものもある」、、、たしかに(イラン商人が言うところの)キャメルボーンシューズには、中に裂き織りの内張りがありましたから高級品なのかも!だから本当にキャメルかも!さらに、こんな記述が。

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(『IRAN JEWEL OF JEWELS』より引用。暮らしの中の靴ってこんな感じでしょうか)

「使い古したタイヤはほとんど限りないと言ってよいほど供給されるので、いまや多くの職人は、そのようなタイヤを使って靴底としたギーヴェを作っている。その結果、従来のギーヴェ作りの技術は著しく衰えてしまった」。

この記述から類推すると、タイヤ底ではないSさんのギーヴェは伝統的な手法で作られた稀少なものではないかとも思われます。「キャメルボーン」となれば、もっとすごいんじゃないですか?、、でも、、、なんだか革ひもにも見えてきたんですけど、、、

やはり、謎ですね〜。モロッコサンダルはお洒落さで人気。セレクトショップにイラン靴が並ぶ日は、はたして来るでしょうか?!

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(上品と野蛮のミックステイスト!私の大好きな映画「レニングラード・カーボーイズ・ゴー・アメリカ」の靴を思い出しちゃいました(*^_^*)。・・思うに、縁を揃えてカットしていない点がキャメルボーンの気配の一因かも)
by orientlibrary | 2009-04-18 19:16 | 中央ユーラシア暮らしと工芸