イスラムアート紀行

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工芸の秋 〜 日本の美術タイル@旧朝香宮邸、漆藝、割り箸ピアノ、色の景

工芸の秋に背中を押されて、ブログ更新。動こう書こう!、、 写真中心になりますが、アップしていきますので、サクッとお立ち寄りください。

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■トークイベント「昭和の美術タイルと旧朝香宮邸」@東京都庭園美術館

庭園美術館で開催中の展覧会「アール・デコの花弁」。その関連イベントとして、タイルに焦点を当てたトークイベント「ディテールのアール・デコ 旧朝香宮邸の室内空間 〜 昭和の美術タイルと旧朝香宮邸」がおこなわれました。参加予約は、すぐに満員になったようです。リニューアルした庭園美術館の魅力はもちろんでしょうけれど、最近のタイル人気もあるのかな。

トーク内容は、タイルの定義(〜世界のタイルの歴史概略)、昭和のタイル、美術タイル、アールデコの建物にタイルが多用される理由、幾何学模様、旧朝香宮邸のタイル(玄関から便所、テラス、中庭、居間、バルコニー、ガーデンなど各所について、現在の写真と貴重な図面を見ながらの解説)と、全体を網羅しながらディテールに迫るものでした。

同館出版の本の帯、「絶品のタイル、極上の石。絢爛たる意匠を堪能せよ」。え?タイル??、、、 朝香宮邸(1933年=昭和8年竣工)、何度か行っていますが、これまではアールデコという先入観のせいか、正直、土っぽいタイルというイメージはあまり持っていませんでした。絶品?

でも、トークでタイルだけを追って拝見してみると、これは確かにすごいですね。認識あらたにしました。といっても、アールデコの文脈から、ではなく、日本のタイル、という面からです。

朝香宮邸のタイルは、日本の美術タイルの二つの名門、「泰山製陶所」(池田泰山/京都)と「山茶窯」(小森忍/瀬戸)のタイルを採用。「この2大メーカーのタイルを同時に使っている現場はここしかないのでは。それが“絶品”のワケ。タイルのすごさを実感した。職人もすごい」(講師の後藤泰男さん)。

当時の日本の美術タイル独特の重厚さ、やきもの感の強さよりも、こちらでは一片が小さなタイルを幾何学的に組み合わせたり曲線を取り入れたりして、柔らかく軽やかな印象です。そして何と言っても魅力は淡い「色」、その組合せだと感じました。

きれい。何色と言えない仄かな薄い紫、薄い青、薄い茶色、さまざまな色。揺らぐような、たゆたうような釉薬の質感。なんという魅惑でしょう。スライドでタイルの写真をずっと見せてもらっているうちに、テキスタイルを見ているような気がしてきました。日本の絣を見ているような感じ。日本の美の感性。

これだけの色のバランスを作り出せた裏には、色を綿密に指示した設計図があったようです。職人さんも大変です。すごい仕事ですね。

が、残念ながら写真がないのです。トーク日は撮影禁止(平日のみ撮影可能&この展覧会会期中だけでは?詳細はサイトをご参照ください)。また行ってきます。

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(かろうじて撮った写真3枚)

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(妃殿下居間 バルコニー タイル(部分)=庭園美術館ホームページより引用)



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■「三田村有純漆藝展 黄金幻想」@平成記念美術館ギャラリー

三田村有純さん、江戸蒔絵赤塚派十代を継承、東京芸術大学漆芸術科教授(先日退官)、日展作家として活躍。展覧会サイトはこちら

「自ら木を掘り、漆を塗り重ね、その上に漆で絵を描き、金を蒔いた作品」35点の展示。「風景彫刻、レリーフによる壁画、揺れる箱などが漆の概念を超えた魅力を放つ」。「参考出品として、祖父、父、三人の息子の作品も合わせて50点が並ぶこの展覧会は、漆藝を代々受け継ぎ、明治、大正、昭和、平成と発展してきた三田村家の歴史と、漆藝の未来を見せてくれることでしょう」(チラシより)。

漆、蒔絵は、土もの好きの私にとって、少し敷居の高いというか、見るのが難しい印象があったのですが、見始めると、細密な技巧、優美な美しさ、奥に感じる自然の素材感、日本の美意識などに、引き込まれるのを感じます。

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(物語性が印象的。吸い込まれるようです)


平成記念美術ギャラリー、次回の展示は、九谷の作家・武腰一憲さんの「色絵シルクロード行」。「特にウズベキスタン共和国の艶やかさは九谷の色と重なり、それ以降その作風がライフワークとなりました。鮮やかなサマルカンドブルーが力強く優しく語りかけ、悠久の時間が流れる作品たちを、どうぞお楽しみください」。青に会いに行こうと思います。



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■ ”FUTURE AMBIENT feat. Benjamin Skepper and Sami Elu”@WALL&WALL

孤高の音楽家 BENJAMIN SKEPPER&自作の割り箸弦楽器「幻ピアノ」を操る唯一無二のアーティストSAMI ELUによるライブ。内容紹介はこちら

割り箸ピアノのサミエルさんの大ファンです。戸外イベントで聴いて、一目惚れならぬ一耳惚れ?!高価なシンセサイザーとかではなく、本当に割り箸やリサイクルの素材で自作したピアノで奏でる他にない音の世界は、アコースティックの素朴な優しさとエレクトリックなコズミック感があり、私にはずっと聴いていたい音楽なのです。

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***  YouTube  What Does a Chopstick Piano Sound Like?  ***




ベンジャミンさんも初めて聴く音の世界。「常にどこに居るのかわからないほどに、セレブのオーダーで世界中を縦横無尽に飛び回る貴族系?!音楽家」。すごいな〜。「来週はロシア。大学で人間の遺伝子を数学化した音楽をチームで研究中」と流暢な日本語で。いろんな世界があるんですね。


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■「SENSE OF MOTION あたらしい動きの展覧会」@スパイラルガーデン

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写真のみです。エマニュエル・ムホーさん作品の景色、どこから見てもワクワクする色の景色。単体はシンプルな形ですが、集まって、何か自然を思わせます。スパイラルのサイトはこちら



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超駆け足で書いてきました。がんばろう。。
# by orientlibrary | 2016-11-13 01:12

映画『あたらしい野生の地 リワイルディング』

忘れないうちに、印象が強いうちに、、と思うと、こんなに頻度低いブログアップが、映画の話題ばかりに、、。そう、今回も映画「あたらしい野生の地 リワイルディング」について、なのです。

いろんなことを書きたいと思っているんです。たとえば、

1: 日本のタイルの動き・まとめ (日本のタイルが動いています!多治見市モザイクミュージアムのオープン、各地の多彩なタイルイベント、タバコ屋とタイルの会に寄せられる日本各地のタイルの景、素晴らしい本『美濃のモザイクタイル つながる思い、つなげる力』、「タイルびとの会」のイベント、など)

2: 「工芸を体感する100日間」レポ (10月22日〜1月29日まで東京で開催される300に及ぶ工芸イベントについて、ガイドブックを見ながら行ける限り行き、見学体験し、なるべくトークなども参加し、それをレポしていこうと思い、別のブログの用意までしました。実際、展示やトークにも行っています。が、まだ書けていません、、)

3: 民藝を巡る (2とも関連しますが、この数年、あらたなブームとも言える若い層の民藝人気について、ショップやイベント体験を)

4: ホラズムのタイルと陶芸 (ウズベキスタン西部、ホラズム地方の装飾タイルと青の陶器について。陶芸工房訪問レポ。取材もしています。かなり秘境の地、二度訪問しました。でもまだ書けていません)

5: アースバッグの家づくり (今年の2月に出会った「アースバッグ」、土で作る家(空間)に一目惚れしました。天幕と土の好きな私の超ツボでした。主催者や集まる人たちも魅力的。時間をかけて追いかけたいと思っています、が、まだまだ動けていません)

6: タイルのテーマいろいろ (鳥の図柄、魚の図柄、多角形、幾何学、その意味や背景、文化など)

7: 九州北部の陶磁器 (有田、三川内、そしてこれから回りたい九州の産地。有田焼400周年イベントレポ)

8: 植物アルバム (去年秋から、コンデジでパシャパシャですが、植物の写真を撮っています。小さな植物の宇宙、枯れて満ちて開く時間の流れに惹かれています。雫も好き)

、、などなど。要気力&体力、です。

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(テーマいろいろ)



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「大自然の無尽の力を、春夏秋冬の歓喜を、途切れることのない命を、そして生死を見つめていた」〜『あたらしい野生の地 リワイルディング』 

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■ 干拓事業の失敗で放置された土地

オランダというと、海抜が低く人口過密な小さな国、というイメージが。そのオランダに、しかもアムステルダムから2時間ほどのエリアに、何万匹もの馬が駆け抜け、キツネや鹿が走り、さまざまな鳥が飛ぶ「野生の地」がある、そのことがまず、イメージできませんでした。しかも、1968年以降、50年に満たない時間の中で、ほぼ自然にできた野生というのですから、不思議でなりませんでした。

映画公式サイト、現在上映中の渋谷UPLINKサイト、そして菅啓次郎さん&ドリアン助川さんによるトークショー(濃くて充実!)の内容から(メモとっていないので記憶違いがあったらすいません!)、少し書いてみたいと思います。

まず、この野生の園が、元々は干拓事業の失敗で放置された土地だったということに驚きます。

「アムステルダムから北東50キロの海沿いに位置する6000ヘクタール程の小さな自然保護区「オーストファールテルスプラッセン」。もともとは1968年に行われた干拓事業の失敗で放置された人工の地だった。しかし、人に忘れられたその土地に、わずか45年で自然はあたらしい命を育み、野生の楽園を築きあげていた」(UPLINKより)

オランダは干拓事業による地域が多い国ですが、放置されたというこのエリアは海抜が低い湿地で、水はけがうまくいかなかったのだそうです。そして放置されたままに。


■ 生態系が自らを復元する

ところが数年後に、植物学者が訪れてみると、あらたな生態系ができている気配が。長期を見越した調査や計画がすすめられ、10年程後には馬をこの地に放ちます。

「この土地でもっとも人目を引くのは、美しいたてがみをゆらして草原を駆け抜ける馬の群れ。ヨーロッパ原生種の馬にもっとも近いといわれるポーランドのコニックがリワイルディング(野生の再生)の試みとして放たれると、馬たちはこの土地に適応し、人間の介入の外で順調に数を増やしていきた。今では2000頭を優に越える頭数が確認されている」(公式サイト)

放たれた生き物もあれば、さまざまな地から入って来た多様な生き物が。

「同時期に放たれたアカシカも繁殖に成功。また鳥類では、17世紀以来ヨーロッパ大陸では目撃されたことがなかったオオワシが、おそらくスカンジナビア半島から飛来して姿を見せている」(公式サイト)


■ 春夏秋冬、生き物たちと自然、映像の美しさ

この野生の園の広さは東京大田区ほどであり、それほど広くありません。まさに都市近郊ですが、ゲートで囲まれており、一部を除き人間は入れないそうです。この中に、16人もの各分野(動物、昆虫等)の専門カメラマンが入り、600日かけて撮影したという映像の迫力、臨場感、美しさが素晴らしい。

「限られた土地の中で植生がどう移り変わってゆくのか、どこにどんな動物が戻り、他の動植物たちとの関係をつくっていったのか。湿原にはコケ類が、草原には一年生の草本が、そして森林には多年生の草木がはえ、土の性質を変えていく。水辺にはまず魚、両生類が戻り、鳥類が呼び寄せられ、それを狙ったキツネがやってくる。草原では馬やアカシカが子どもを育てる。こうした生態系復元のプロセスや自然のサイクルを美しい映像を通して学ぶことができる本作は、それはまるで動く生きもの図鑑のよう」(公式サイト)

トークでは福島の話がありました。避難指示が出された南相馬では一時、家畜が野生化して繁殖しているという報道がありましたが、守るのではなく殺すという選択が取られたそうです。南相馬は元々は湿地帯で、津波の後、農地に開拓された部分が流されて元の湿地に戻り、自然という面から見ると、この「オーストファールテルスプラッセン」的でもあったそうです。複雑な気持ちです。


■ 凍っていく鹿のように、、 

ドリアン助川さん、トークにて開口一番「この映画は(老子の)tao、タオだと思った」。そして「観られた幸せ」を、詩人の言葉でたくさん語ってくれました。皆さん同じなのでしょう。映画へのコメント、いい言葉がたくさんありました。(公式サイトより)

* 捨てられた土地で新しい生命の可能性が示された。それは人間の想像を超えた想定外のことだった。考えてみよう「捨てる」ことの積極的な意味を。認識を変えたとたん、それは新しい思想になる。(田口ランディ)

* なにもなかった場所にこれだけの宇宙が誕生するのであれば、この世の命あるどんなものも自らを再生する力を持っているのだと確信できた。(吉本ばなな)

* 映像を観ているうち、ボクは草に宿った水滴となり、大自然の無尽の力を、春夏秋冬の歓喜を、途切れることのない命を、そして生死を見つめていた。体験し得た者は、本当の意味でこの世の祝福を受けたのだ。(ドリアン助川)

* 人間の手の触れない世界が、隅から隅まで、どれほど喜ばしい生命に満たされているかを、本作品はつぶさに示してくれる。(野崎歓)

* ひたすら生きて繁殖して死んで食われる、食われて死ぬ。ただそれだけのことが圧倒的に美しい。この美しさは、ただ単に人間が「何もしなかった」ことの結果だ。その結果を驚くべき映像でつきつけられ、身体中の細胞が喜びに打ち震える。この映画の中で凍ってゆく鹿のように死にたい、と本気で思った。(小池桂一)


・・・ 「凍ってゆく鹿のように死にたい、と本気で思った」、同感です。もっとも強く印象に残ったシーンです。死期を悟った鹿の眼に映るオーストファールテルスプラッセンの景。それをカメラは静かに見つめます。動物の眼に映る自然の景、次第に閉じていく眼、閉じた眼に降り積もる雪。厳しく、悲しく、しかし美しかった。この死は不幸なのでしょうか。自然なのでしょう。私の心にも、思いが降り積もりました。

映画は、東京アップリンクの他、名古屋、大阪、京都などで上映されるようです。
* 公式サイトはこちら
* UPLINKサイトでの紹介はこちら



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タイルのブログとしては、オランダ→デルフトを載せるべきなのでしょう。けれどもヨーロッパのタイルの写真がほとんどない、イスラームタイル一辺倒のorientlibraryです。中国染付と染付に憧れたデルフト&世界各地のブルー&ホワイトのやきものを少々ご紹介します。


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(青花魚藻文壺/景徳鎮窯/元時代14世紀)(青花唐草文水差/景徳鎮窯/明時代(1426−35))(デルフト/藍彩人物タイル)(イラン)


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(トルコ)(青磁染付鶴亀図大皿/伊万里/19世紀)(ウズベキスタン)(リシタン絵付け)


近々、何かアップしたいです。気合い入れつつ、セルフメンテナンスをゆるゆるやっていきます。
# by orientlibrary | 2016-11-03 23:04 | 美術/音楽/映画

キルギス映画「山嶺の女王クルマンジャン」「アンダー・ヘヴン」

9月下旬から10月上旬にかけて、「中央アジア+日本」対話 第9回東京対話ウィークリーイベント 「知られざる中央アジア:その魅力と日本との絆」(外務省主催,独立行政法人国際交流基金,筑波大学,東京大学,東京外国語大学の共催)が開催されています。

音楽祭やシンポジウムは、なぜか平日の日中という多くの人にとっては行きにくい日程ですが、「中央アジアミニ映画祭」は夜間開催。「明りを灯す人」(キルギス)、「True Noon」(タジキスタン)は以前観ており、今回観たかったのはキルギス映画「山嶺の女王クルマンジャン」(2014年)、「アンダー・ヘヴン」(2015年)。東京・駒場会場にて観ることができました。ずっしり見応えがありましたよ〜。内容を忘れないうちに、備忘録的なブログアップにて失礼します。


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(キルギスにて。クルマンジャンでも、馬と人は常に一体だった/orientlibrary)


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<重厚!キルギス歴史スペクタクル 「山嶺の女王クルマンジャン」>

・・・・・ 19世紀、中央アジアにおいてキルギス人の誇りを貫いた高地民族の女王クルマンジャン。山岳地帯に生まれ育ち、「神と長が決めた」男と結婚するも婚家の男達の情けなさ、酷さに我慢ならず脱出。運命の出会いからクルグズタン南部アライ地方のダトカ(部族長)、温厚で聡明なアルムベクと結婚。しかし部族間抗争は絶え間なく、コーカンド・ハン国によりアルムベクが暗殺される。指導力と人望のあったクルマンジャンがダトカになる。ロシアは中央アジアに南下、やがてアライを支配する。これに抵抗する部族民の抗争が続くなか、クルマンジャンは二人の息子を喪う。それでもなお、キルギスの部族の誇りを守り抜き、96歳で逝去。その波乱万丈の一生を実話を基に製作した映画。

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アジアフォーカス・福岡国際映画祭上映後のQ&Aより
・国家的プロジェクトで政府の支援もあり、キルギス社会全体の後押しがあって出来た作品
・予算は150万ドルあり、メインプロデューサーを務めたのは現役の女性国会議員
・クルマンジャン生誕200周年に向けて、彼女にちなんだ映画をつくろうと社会的に影響のある文化人の間で動きがあった
・91年の独立後、あまり映画は製作されていなかったので、今作は大きな挑戦だった
・監督は以前、キルギスの首相だった人物。しかし、監督のプロではないのでロシアの映画学校で一から勉強した

・19世紀の中央アジアの女性の地位は男性よりもはるかに低く、周辺の国々もそうだった
・キルギス国民なら誰でも知っている女王クルマンジャンはキルギス南部で生まれた初の女王
・キルギスでは昔から男性は息子を教育する、女性は国民を教育する、と言われている。クルマンジャンはまさにその一例
・ドキュメンタリーではなく実話を基に製作されたものであり、映画化にあたっては脚色もあるが抽象的な表現も見てほしい
・激動の時代を生きたクルマンジャンダトカの肖像はキルギスの紙幣にもなっている


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(映画の中でのコーカンド・ハン国は衰亡期。写真は現在のコカンド/orientlibrary)


■イスラムアート紀行 感想
* 2時間超、緊張感が高いまま、ドキドキハラハラ。濃厚な歴史スペクタクル。国をあげての総力製作、守り抜いたキルギスの誇り、美しくも峻険な自然の景、役者さんたちの渾身の役作り。見応え。次回機会があれば、天幕や生活用品などじっくりと見たい。もう一度見たい!

*映画中、 唯一ホッとできたのは、天幕の中でのコムズ(キルギスの弦楽器)の演奏シーン。それだけ。想像するに、クルマンジャン、というよりも当時のかの地の人々の暮らしは、同様に緊張感の高いものだったのでは。部族間抗争は絶え間なく、周辺のハン国、大国の影も常にある。戦と隣り合わせの日々は、さぞやきびしいものだったでしょう。

* 「男の子を授けてください」と夫婦がシャーマン(?)に願う冒頭シーン。続いて、でっち上げの姦通を名目に女性への石打刑あわやという場面では「女の証言など当てにならん」。「女は家畜じゃない!」というクルマンジャンの叫び。部族社会での女性の地位の低さ、というか、男達のやりたい放題。いい加減にしろよ!と怒鳴り込みたくなります。イスラームは女性を差別する、と言われますが、元々の部族社会の慣習という面は大きいと感じます。

* ハラハラの合間には、画面の中のフェルトや山岳民族の衣装を楽しみました。青のスッキリした衣服がカッコいいと思ったらブハラからの使者、赤のチャバンはブハラのアミールでした。ブハラの衣服が都会的?でカッコ良く映りました。&口琴の響きはなぜか崖のシーンに合う。ウエスタン映画連想?

* 激動の日々を生き抜き、96歳という長寿を全うしたクルマンジャン。まさにキルギスの母ですね。女性も活躍する市民社会、民主主義の国をうたう現在のキルギス。英雄の中でも女性をテーマにすることは、内外へのメッセージなのかなとも感じました。


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(タイル主役のブログなので、こちらを。コカンドのパレス、ファサードのタイル装飾/orientlibrary)



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<キルギスの自然の中、息詰る心理劇 「アンダー・ヘヴン」>

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2016WEBサイトより(下記のあらすじ↓)

・・・・・  中央アジアの荒涼とした大地を舞台に描く、キルギス版「カインとアベル」。反抗的なケリムと良心的なアマンの二人の兄弟は、石工の仕事をしながら母と暮らしている。父親はケリムの借金のため、出稼ぎに出ていた。二人が一人の少女サルタナに恋をしたことから、悲劇が起こる。『エデンの東』のモチーフにもなったと言われている、旧約聖書「創世記」に登場する人類最初の殺人の加害者と被害者とされるカインとアベルのストーリーを、キルギスの広大な地で墓石の採石をする兄弟の物語に置き換えた、女性監督ダルミラ・チレプベルゲノワの野心作。

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(映画でも重要なモチーフであった石人、映画にも登場したイシククル湖/orientlibrary)


■東京・駒場での上映後のQ&Aより
・石人とは=戦で負けた人を讃えるために作られるもの。映画のラストでは善と悪という意味ではないか。

・旧約聖書のカインとアベルがモチーフとのことだが=キルギスにもキリスト教徒(ロシア正教)はいる。 (*イスラムアート紀行思うに、普遍的なテーマであり、採石場という光景と合ったのかな?)


■イスラムアート紀行 感想
* 心理劇は苦手と思いましたが、最後まで緊張感を持って観ました。石人について、鉱物資源、冠婚葬祭の慣習、地方と都会の格差、ロシアへの出稼ぎなど、ストーリーの中で臨場感を持って伝わりました。

* 民族衣装は多くないけれど、フェルト、キリム、葦の工芸、石彫りなどを、たっぷり見ることができました。

* イスラムアート紀行のテーマである「タイル」が、かの地では富裕層向けの商品であり、ケリムが「街に行ってタイルを作れるように稼いで来る(お父さんにタイルの仕事をさせてあげたい)」というようなことを言っていたのが印象的。

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(映画では荒涼とした採石場の景色が多かったけれど、自然がゆたかなキルギス/orientlibrary)



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中央アジア関連イベント、この間、グッと増えてきました。「中央アジア文化祭」をおこなった2年半前はまだまだ、なかった。検索しても「中央アジア文化祭」(イベント及びfacebookページ=現在非公開=)がトップに出てきてしまって、、複雑でした。今はいろいろあります!!状況、変わりましたね!!


---  イスラムアート紀行内・中央アジア文化、映画などの関連記事  ---

中央アジアが熱い!音楽、踊り、コミック、人々(2013 /01/28)

中央アジアの映画や演劇、独特の世界が魅力(2006/12/01)

聖なるブハラ 太陽に向かう鳥(2005/12/07)


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(コカンドのタイル/orientlibrary)
# by orientlibrary | 2016-09-30 00:11 | 美術/音楽/映画

「ソング・オブ・ラホール」〜全世界に知ってほしい。パキスタン人は芸術家でテロリストじゃないことを〜

音楽の興奮と希望に満ちたドキュメンタリー映画「ソング・オブ・ラホール」(SONG OF LAHORE)。8月13日から渋谷ユーロスペースにて公開中。キャッチフレーズは「スィングしなけりゃ“あと”がない」。観て、その意味がわかりましたが、公開中の映画なので、内容がわかるような感想を書けないのが、とても残念。



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一度だけじゃもったいない。何度も観たくなる映画。いろんな発見があると思う。


● ストーリー 要約 (公式サイトより) ● 
「パキスタン映画産業の中心都市、ラホール。数々の映画が作られるとともに、伝統楽器を使った映画音楽も数多く生み出された。しかしイスラーム化の波、タリバンによる歌舞音曲の破壊によって映画界は衰退。音楽家たちは転職を余儀なくされる。そんな中、ラホール出身の実業家イッザト・マジードが私財を投じて音楽スタジオを作り、往年の音楽職人たちを集めて楽団“サッチャル・ジャズ・アンサンブル”を結成。彼らは古典楽器を用いた、世界で類を見ないジャズのスタンダードナンバーを生み出し、名曲「テイク・ファイヴ」をカバーしたプロモーションビデオは100万以上のアクセスを記録。ウィントン・マルサリスが、彼らをニューヨークへと招待。そこで彼らは、音楽家である誇りを取り戻していく」

ドキュメンタリー映画なのだけれど、良質なドラマのようでもあります。キャストの個性が際立ち魅力的なことに加え、音楽家たちの窮状からニューヨーク公演までの展開がスリリングで、感情移入し、ヒヤヒヤドキドキ、なのです。

それほどに音楽家たちを応援する気持ちが沸き上がるのは、それぞれの音楽家が語る音楽への尽くせぬ愛と敬意、伝統の継承者としての使命感が、ていねいに描かれているから。

何代も続く伝統音楽一家の継承者として、誇りを持ち精進を続けてきた凄腕の音楽家たちが、社会変化の中で音楽で生計をたてられなくなり、ウエイターやリキシャドライバーをしなくてはならなかった日々の葛藤、子孫に音楽を伝承できない苦悩。どうぞ誇りを取り戻し、存分に活躍して欲しいと思わずにいられません。


● 監督のことば 要約 (公式サイトより) ● 
「私は祖父からパキスタンの昔の音楽のことを聞いて育ちましたが、私が育った1980年代頃にはそれはすべて過去のものとなっていました。2012年ごろ、ラホールの音楽家たちが一丸となり、パキスタンの伝統楽器を使った音楽をレコーディングしているという無謀とも思えるような話を聞いた時、それが私の伝えたい物語だと気づきました。その時は彼らの旅がどこへたどりつくのか想像もつかず、ただ彼らの声や音楽を残したいと思いました」

監督はシャルミーン・ウベード=チナーイさん、女性です。いい映画撮るなあ。「ただ彼らの声や音楽を残したいと思った」、これがモチベーションというものですよね、理屈ではなく、ただただ撮りたいと思う。そして展開は思いがけない方向に。ニューヨークでの4日間のリハーサルシーンは白眉、そして感動のラストへ。


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< トークイベント  「パキスタンから世界へ!超絶演奏楽団サッチャルの魅力を語る」 >

サッチャル・ジャズ・アンサンブル、数年前にサラームさんが、某研究会で紹介されたとき、そりゃあもう驚きましたよ。白い民族衣装のおじさんたちがヴァイオリンを奏で、シタールやタブラは超絶技巧で、それでいて曲目が「テイク・ファイヴ」、、。今回その背景を知り、私も一緒に旅したような気持ちになりました。

映画公開に先立ち、映画『ソング・オブ・ラホール』公開記念 トークイベント 「パキスタンから世界へ!超絶演奏楽団サッチャルの魅力を語る」が開催されました。出演は、サラーム海上さん、村山和之さん、ヨシダダイキチさん。秘蔵映像を見ながらパキスタン音楽の魅力をスタディしておくというもの。

会場は満員でびっくり。2時間半、疾走しつつ濃厚なトークと演奏が繰り広げられました。サラームさんのサッチャル・ジャズとの出会い、村山さんのタリバーンの音楽(メロディはダメ、聖句などを吟ずるのは問題ないとのこと)などパキスタン音楽の紹介、ヨシダさんのグルーブ感ある「テイク・ファイヴ」シタール演奏、すべて素晴らしかったです。愛と熱がありました。

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「ソング・オブ・ラホール」、、とにかく、オジさんたちがいい。ウィントン・マルサリスが、またいい。

音楽がいい。音楽はいい。

こんなに人を繋ぐものを、こんなに時を繋ぐものを、こんなに空間を超えるものを、禁止したり弾圧したり、それはイスラームの教えではない。原理主義はあくまでも原理主義。現実が、伝統が、思いが、それに押しつぶされることがありませんように。パキスタンの圧倒的な音楽伝統が、卓越したセンスが、代々の技術が、これからも伸びやかに継承されていきますように。


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< TILE IN LAHORE AND INDIA >

最後に、タイルオタクから少々。前述のトークイベントで、ラホールの光景がスライドで紹介され、「あ、タイルだ!」と喜んだのですが、もしかしてタイルと認識されていないかも、、という弱気の想像も。たぶん、このタイルだったと思う。違ったらゴメンナサイ。でも似たものです。

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(MOSQUE OF WAZIR KHAN, LAHORE, COMPLETED IN 1634-35 /cut tile mosaic panel with an inscription in Persian in the nastaliq style on a blossom strewn ground/『The Art of the Islamic Tile』より引用)


このタイル、トークの中で「中央アジアの印象がある」とのお話がありましたが、タイルに限定して言えば中央アジアではあまりないタイルの様式だと思います。中央アジアは青が主で、こちらは黄色と緑がメイン。中央アジアの印象を持たれたとしたら、アトラスなど色鮮やかな布のイメージと重なったのかも、、。印象すごく強いですものね!


黄色と緑はイランやモロッコのタイルでも使われますが、ムガル時代のタイルの特徴を示す色だと思います。まさに、ムガルのタイル。ムガルインドの都・ラホールらしいタイルですね。参考までに、ラホールのタイルを写真だけですが少々。

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(LAHORE FORT, LAHORE, COMPLETED IN 1631 /the parrot perching on the upper cornice seems to be peering down at the little scene showing horsemen in the middle register/『The Art of the Islamic Tile』より引用)


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(orientlibrary)


インドにはタイルがない、というイメージがありますが、ムガルインドの建築物をよ〜〜〜く見ると、少しあるのです!その写真を少々。インドは石造建築が主なので、装飾もタイルに走りませんでした。石の象嵌の美しさはよく知られるところです。だからタイルも、どこか石っぽい。
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(orientlibrary)


パキスタンのタイルということでは、時代を遡り、デリースルタン王朝時代の、ムルタンやウッチュのタイルが圧巻です。こちらは青、青、青。濃い青、強い青。そして幾何学の構図が素晴らしい。インド亜大陸タイルの傑作です。写真を少々。
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(orientlibrary)


文章を推敲するより、とにかくアップ、を目指します。気持ちがフレッシュなうちに。
そうしないとなかなかアップできないので。ことば足らず、乱文、ごめんなさい〜。



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<リンク>

  『ソング・オブ・ラホール』 公式サイト
http://senlis.co.jp/song-of-lahore/

  『ソング・オブ・ラホール』 facebook
https://www.facebook.com/songoflahore.jp/?fref=ts

  『ソング・オブ・ラホール』予告編
https://youtu.be/fSepumfQkd4

  Sachal Studios' Take Five Official Video
https://youtu.be/GLF46JKkCNg

  映画『ソング・オブ・ラホール』公開記念「パキスタンから世界へ!超絶演奏楽団サッチャルの魅力を語る」
https://www.facebook.com/events/1702373750024046/

  クラウドファンディング 「パキスタン伝統音楽×ジャズ!? サッチャル・ジャズ・アンサンブルの初来日公演にご支援を!」(9月来日決定!!
https://motion-gallery.net/projects/song_of_lahore

 レヴュー「劇映画よりドラマチック!な ドキュメンタリー『ソング・オブ・ラホール』」(ブログ「アジア映画巡礼」/パキスタンの状況も含め詳細な解説)
http://blog.goo.ne.jp/cinemaasia/e/16f9c1c2fd5baf856f50150788b2175f

 レヴュー「Song of Lahore (Pakistan)」(HP「バハールドゥルシャー勝」/ラホール、パキスタンの歴史から、音楽家のカースト、宗派について、映画の紹介など、さすがのレビュー!!勉強になりました!)
http://www.bahadurshah.com/film/song-of-lahore
# by orientlibrary | 2016-08-13 22:45 | 美術/音楽/映画

「あめつちの日々」とわたし

前回から1年2ヶ月、あまりに久しぶりのブログ更新となりました。去年の今頃は、ウズベキスタン(ホラズム)行きの準備などで、あわただしく過ごしていました。

昨年5月後半、ウズは極暑一歩前。真青な空、ホラズムの紺碧のタイル。イチャンカラ(ヒヴァ)でのミッション、煉瓦や木材の調達、工芸品探し、陶芸工房やアーティスト訪問と再会、中世のようなバザールの活気。遠い昔のようです。

昨年晩夏以降、気持ちも体調も低迷していました。自身の甘さ全開なのですが、大好きな母の急逝という喪失感は大きく、加えて今年に入って4ヶ月以上も続いた体調の悪さには滅入りました。でも、、ようやく気力が沸いてきました。体調が改善してきたタイミングもあったと思いますが、活力のきっかけにこの映画があったことは間違いありません。「あめつちの日々」。


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■ 「あめつちの日々」のはじまり ■


「2011年。私たちが探していたのは「土」でした。風土と人間の暮らし。撮ってみたかったのはその絶対的存在でした」(「あめつちの日々」WEBサイトより)

そして向かったのは、「四名で持つ共同窯「北窯」。沖縄最大といわれる登窯はダイナミックで上へ上へと昇りあがってます」 松田米司氏に話を聞く。「土はなくならないのでしょうか?」「いずれなくなるかもしれないね。自分たちにも責任はある。だから懸命に喜んでもらえるものをつくろうと思っている」

(*北窯(きたがま)=沖縄中部読谷村。宮城正享・與那原正守・松田米司・松田共司の4窯元の共同窯として1992年に開窯。13連房という大きな登り窯で年5回火入れする。)

約4年をかけて、松田米司さんとその工房、北窯を取材・撮影・編集。上映は16年5月7日が初日。現在、渋谷イメージフォーラムで上映中です。(* プロデューサー=高田 明男、監督・撮影=川瀬 美香。敬称略)

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■ 土と笑顔 ■


(じつは、「あめつちの日々」、すでに3回観ました。何度観ても発見があるし、何か書きたいと最初から思ったので、構成や言葉などを記憶したかったのです。が、覚えてません!無理。以下、あくまで私が覚えている範囲、しかも感覚的印象優位です。正確さは、別の何か?でご確認ください。)

映画の冒頭シーン、瓦の上に置かれたたくさんの赤い陶土。健やかなたくましい姿で、読谷の陽射しを浴びています。土の様子を見に来た松田米司さんの、土と呼応するような満面の笑み。その笑顔があまりにも素敵で、、一瞬にして映画に引き込まれました。

瓶のろくろ挽きの長回しもいいですね〜。端的でよくわかる。「土族(つちぞく)」としては、土がどーんとアップで撮られるということに、すでに興奮状態。しかも、その迫り方に土へのただならぬ愛を感じました。土のアップと長回しで、撮っているのは女性かな?と思いました(当たってました。気になるところにグッと、、そのお気持ち、わかる気がするのです)。

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■ キラキラするものを見つけてしまったんです(松田米司さん) ■


沖縄や“やちむん”(沖縄では焼物のことを「やちむん」という)のことを語る米司さんの言葉のきらめきに魅了されました。(繰り返しになりますが、以下、正確な再現ではありません!)

「沖縄が好き。くされ縁というか、面倒ではあるんだけど、その中に、キラキラするものを見つけてしまったんですよ。土に関わることなんだけど。それは自由で魅力的なことなんです」

「伝統というのは、個人が入ってはダメなんですよ。入らないほうがいい。沖縄の、というところに、誰の、が入ると、なんだか、、うるさいでしょう。工芸というのは、それを話題に皆が語り合うような、文化のものだから。沖縄には伝統があり、しっかりと作れる陶工たちがいるのだから」

「(車で出かけた先にて、カゴに何かを拾って入れながら)  これは釉薬に使う鉄分の多いマンガン。沖縄のやちむんは、自然からいろんなものをもらっているんだよ」  (*「この場所は旧日本軍の飛行場で、その後、米軍が占有していたところ」という。その上空を飛ぶのは米軍飛行機か。現在も米軍基地がある。奇しくも今日5月15日は沖縄返還の日。44年経ちました)

陶土を求めてベトナムへも。合間に街で気に入った茶碗や皿を買い求め、とろけるような笑顔。沖縄の白土の成分とほぼ近い白土(カオリン)の工場と原料採掘所へ。  「(土を手に持ち笑顔で) 採掘所っていうのは、ワクワクするね。この広い採掘所の地面の下、全部(土)でしょう。すごいな。なるべく原土のままで精製しないで使いたい。この土は化粧土にしたい。沖縄の土と混ぜて作陶もしたいし、釉薬にも。本当は沖縄の土でやりたい。でも、いろんな方法を考えなくちゃならない」

「琉球人らしく生きるには、沖縄人らしく生きるには。それを考えて職人になった。どこにも属さず、誰にも頼らず、自活していく。自立していく」

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■ 全国から集まる若い陶工さんたち ■


若い陶工さんたちの土づくりも印象深いシーンです。体全体をかけて何ヶ月も土と向き合う姿。陶芸はろくろ挽きや絵付けだけではないこと、大半は土の調子を整えていくような地道な作業であることに気づきます。

皆さん、いい顔。姿勢というか、姿がきれいです。打ち込んでいる人の意気が伝わります。

火入れ、数日の昼夜通しておこなわれる窯焚きも、じっくりと見ることができます。丸太をどーんと入れている、、豪快! 一方で、温度や時間と場所を細密に調整し続ける根気や集中力にも感心しました。

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● 尾久彰三さん(古民芸研究家) ●


「沖縄のやきものには長い伝統があります。そしてスケールが大きいんですよ。小さな島だけど海も含めると大きい。海洋国のスケールがある。そこが本土の陶芸産地との違いでしょうか」

「米司さんは、伝統を深めるほうでやっていかれればいいと思う。今立っている地の奥の方に行く、と言えばいいかな。沖縄にはそれだけの伝統やものづくりの幅があるのだから」

尾久さん、奥ゆかしくて、ほのぼのしてて、いいな。

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● 山内徳信さん(読谷村元村長) ●


強烈な印象です。こういう骨のある人がいたから、今の読谷があるのかなと思いました。

「村長になったとき、何ができるか、経済じゃない、と思った。当時、村の人が皆うつむいて歩いていることに気づいたの。戦後、村の95%が米軍に占有されていた。大人も子どもも、夜空の星を見上げるように胸を張って、自分の村に誇りを持って欲しかった」

「経済じゃない、文化だ。文化村を作ろう。花織りができる場、やちむんができる場を。そういう場を作るんだということで、交渉していった」

1986年の「読谷文化村」構想。詳細な経緯や経過については知らないのですが、現在の北窯も、この文化村構想があってこそのものなのでしょう。米軍占有地も36%まで減少したそうです。

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▼ 健やかで、骨太で、自由 ▼


全編を通じて、土も、人も、やきものも、健やかで、骨太で、自由、その波動が伝わってきました。この健やかさ、生命感が、私がこの映画と出会って受けとった宝物です。

「マカイ(沖縄の椀)は、重ねて焼成する、という制限がある。茶碗の形ではそれができない。そこからマカイの形が決まっていった」。

制限から生み出された形の美。また、重ねて焼成するには正確に中心が取れていないとダメ。基本がきちっとしているから、目に気持ちいいのかなと思いました。

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▼ リシタンやホラズムを重ねたくなる ▼


中世からの陶芸の歴史、今に続く伝統の継承、そして赤土に象牙色の化粧土、地元の植物を使った釉薬。やはりウズベキスタン陶芸と重ねてしまいます。以前から、沖縄とウズベキスタンは似ているという気がしていましたが、陶芸でも重なりを感じました。

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(リシタン)

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(リシタン)

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(ホラズム)

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(ホラズム)


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▼ 感謝します ▼


松田米司さん、工房の皆様、やちむんを生み出してくださってありがとうございます。

映画製作の皆様、熱くて温い、心に響く映画を作ってくださってありがとうございました。(プロデューサーの高田明男さん、監督・撮影の川瀬美香さんは、「紫」を製作された方なのですね。観ました、紫。こちらも迫る映画でした。工芸の次作はなんでしょう!?待ってます!)

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(上映後あいさつ(川瀬監督、松田米司さん)/今回の展示会で入手した茶碗、皿。緑釉は真鍮とガジュマルの灰釉と聞きました。興味深いなあ。これから知っていきたい)

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(「あめつちの日々」公開記念やちむん展示会にて)


とにかく書いてみました。とにかくラフなまま、アップしようと思います。健やかに歩いていきたいです。
# by orientlibrary | 2016-05-15 23:01 | 日本のいいもの・光景